水曜日のゴミ奉行さま
今週のお題「感謝したいこと」
毎週水曜日はプラスチック、ペットボトル、紙ごみの3分別の日だ。アパートの直ぐ横に収集場所があり火曜日の夜からそこかしこよりゴミが集まってくる。わざわざ車で乗りつけて出す人もいる様で朝にはかなりの山が出来上がっている事になる。
しかし、私が朝に見る光景はまるで城跡にある様な芸術的ともいえるゴミの壁だ。
1つずつがほぼ同じくらいの量に調整された袋が人の腰くらいの高さで綺麗に道路と並行に積みあがっている。石垣ならぬゴミ垣なのだ。
こんなに感動的なゴミ収集場は他にはないだろう。
自治体にはゴミ当番というシステムがある。
指定する収集日に決められた時間、ゴミがきちんと分別されて出されているかを監視する持ち回りの役だ。だが、この地区には幸か不幸かそのシステムは無い。
では一体誰が?こんなにも美しくゴミを築くのか?
その正体が分かったのは、ギリギリの時間しか動かない私がいつもより1時間程早くゴミ出しに行った時だった。
"はい、いただくよ、やるから"
有無を言わせず素早く私の手からゴミを持って行ったのは
近くに住む御隠居さまだった。
日中、庭で草取りをしてる姿をよく目にしていたので挨拶程度は交わしていた。
水曜日のゴミ奉行はイチカワさんだったのか…
イチカワさんは地主でこの辺りの物件を複数持っている正真正銘の御隠居さまらしい。
成る程、心にもお金にも余裕のある人はどこか違う。
綺麗なゴミ垣と結びつけて妙に納得したのである。
それから水曜日になるとイチカワさんの居る時間にゴミを出しにいった。
お奉行さまはひたすら黙々と作業を続ける
ただひたすらにゴミを積む姿が
私にはそのまま徳を積む姿に見えて羨ましい。
"おはようございます"
"ありがとうございます"
"ご苦労様です"
いつまでもこのゴミ垣が積まれるといいなぁ
見た人に大切なモノを気づかせてくれるよ。
…たぶん。