グロリア☆グロリア③

グロリアを点検に出す事になった。

数週間はかかりそうなので、帰りの足を確保する為にプリウスと2台で出掛ける事にした。

馴染みの車屋までは片道50キロでちょっとしたドライブになる。

車線の多い慣れない道を走るのは緊張するが、今回はグロリアが先導してくれるから少し氣は楽だ。

グロリアにはナビはもちろんオーディオさえ付いていない。運転中の携帯電話は違反である。

信号で離れない様に、お互いのタイミングを測りつつ、十分な車間を取りながら巡行して行く。

しばらく走っていると、ふとなんだか懐かしさを感じた。

自分が免許を取った頃、複数台の車で海や山などのレジャーを楽しむ事が多かった。

仲間の位置や走るスピードにも気を配り、逸れた時も路肩で待っていたり、敢えて距離を離したり仲間しかわからないコミニケーションを取りながらドライブ自体を楽しんでいた。

携帯電話もナビもなかったけど、目的地にたどり着けなかった事はなかった。ちょっとしたトラブルさえ楽しい思い出になる。

今なら各々がナビを設定して、じゃあ、目的地で！と簡単に済む。

いつからか便利さはドライブの楽しみと引き換えになっていたようだ。

…大切な事は面倒である。

誰の言葉かは忘れてしまったが心に残る台詞だ。

最近のキャンプブームもそんな流れを裏打しているんだろう。IHとボタン一つでご飯を炊ける時代に火を起す事から始める、かつて生きる為だった事がレジャーになる。

不便さが脚光を浴びてくるとは想像もしなかったが

人間は本来、遊ぶ事が生きる事かも知れない。

右側を流れる様に追い越して行く車を見送りながらプリウスの速度計を見て苦笑いした。

自動車専用道路の法定速度を充分に守っている。

前を走るグロリアは4速までしかない。

50年以上前の車のメーターははっきり言ってアバウトだ。目盛りと目盛りの間をキープするなど、デジタル慣れして久しい身としては氣が氣ではない事も少なく無い。

ドライバーはアクセルを踏み込み、エンジンの回転を上げても伝わってくる音と振動の割にスピードが出ていない事に氣付いているだろう。

前を走るグロリアのトップスピードが何Km/hだったか？

後で報告することを想像すると、口元が緩んだ。

#白いタテグロ